最近ご相談として多いのがダブルワーク時の社会保険の加入と扶養の関係についてお問合せを頂きます。
理解の仕方として
- 社会保険へ加入する必要がない事と、扶養に入れるという事は論点が異なる
- ダブルワークの収入は合算するのか
- 社会保険への加入条件に該当するかの確認
- 扶養から外れるかの確認
というステップで確認すると非常に分かりやすいかと思います。
社会保険へ加入する必要がない事と、扶養に入れるという事は論点が異なる
まず前提としては社会保険へ加入する必要がない事と、扶養に入れるという事は論点が異なるという事を理解することで、細かい点の整理がしやすくなります。
パターンとしては
- 社会保険へ加入して、扶養から外れる(自分で社会保険)
- 社会保険へ加入せず、扶養に入る(扶養で社会保険)
- 社会保険へ加入せず、扶養からも外れる(自分で国民年金&国民年金)
1と2は分かりやすいと思いますが、3は少々分かりづらいかと思いますがダブルワーク時にはあり得る状態です。
まずは社会保険へ加入する必要がない事と、扶養に入れるという事は論点が異なり、その結果上記の3つのパターンが存在するという事をご理解ください。
ダブルワークの収入は合算するのか
次にダブルワーク時の社会保険と扶養の関係で混乱しがちなのは、収入などを合算するかどうかです。
- 社会保険の加入条件を満たしているかの確認は、ダブルワークの収入や時間は合算しない
- 扶養から外れるかどうかの確認は、ダブルワークの収入は合算する
ここも前提の大切な知識となります。
社会保険への加入条件に該当するかの確認
ダブルワークのそれぞれで社会保険の加入条件を満たしているかを確認します。
社会保険の加入条件は2種類あり、従業員数が501人以上か、500人以下かで異なります。
500人以下 | 501人以上 | |
適用事業所 | 正社員の労働時間・労働日数の 3/4以上働いている人は適用 | 正社員の労働時間・労働日数の 3/4以上働いている人は適用 |
501人以上の 特定適用事業所 | 週の労働時間20時間以上 月収88,000円以上 1年以上雇用見込みあり 学生ではない 上記4つ全てに該当している場合 |
従業員数501人の会社を特定適用事業所と定めていて、特定適用事業所の場合は3/4未満の労働時間の方も4つ全てに該当していると社会保険へ加入となります。月収88,000円なので1年間で約106万円となりこれがいわゆる社会保険の106万円の壁と言われるものですね。
先述しましたが社会保険というのは会社ごとで加入するかどうかを確認しますので、ダブルワークそれぞれでは加入条件を満たしていない場合は、社会保険の加入はありません。
ちなみにこの501人以上の要件は2022年10月より変更になり、101人以上に変更になることで社会保険の適用となる範囲が拡大されます。現在1年以上雇用見込みの方ではないと加入することは出来ませんが、2ヶ月以上の雇用見込みに変更になります。
2022年10月以降 | 500人以下 | 101人以上 |
適用事業所 | 正社員の労働時間・労働日数の 3/4以上働いている人は適用 | 正社員の労働時間・労働日数の 3/4以上働いている人は適用 |
501人以上の 特定適用事業所 | 週の労働時間20時間以上 月収88,000円以上 2ヶ月以上雇用見込みあり 学生ではない 上記4つ全てに該当している場合 |
ダブルワークで考えた時に、A社とB社でパートをしていてどちらも501人以上の会社の場合
ダブルワークの片方だけ社会保険へ加入
- A社:週20時間以上で88,000円でその他要件も満たしている→A社では社会保険へ加入
- B社:週15時間→B社では社会保険へ未加入
というパターンや
ダブルワークの両方社会保険へ未加入
- A社:週15時間→A社では社会保険へ未加入
- B社:週15時間→B社では社会保険へ未加入
というパターンや
ダブルワークの両方社会保険へ加入
- A社:週20時間以上で88,000円でその他要件も満たしている→A社では社会保険へ加入
- B社:週15時間→B社では社会保険へ未加入
というパータンがあります。
ちなみにこの場合はどちらの会社でも社会保険料を納める必要がありますが、主たる会社を選択する必要がありますので「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」をご自身が提出しなくてはいけません。
またこの場合の社会保険料は、それぞれの毎月の報酬を合算した金額をもとに標準報酬月額が決定され、それぞれの会社の月収に応じて按分して決まります。(仮にA社10万、B社8万の場合は18万円の月収の場合の保険料を5対4で按分というイメージです)
扶養から外れるかの確認
扶養から外れる場合は2つあり、1つは社会保険の加入要件を満たした場合、もう1つは扶養の要件を満たさなくなった場合になります。
社会保険の加入要件は先述したとおりなので、ご自身が社会保険の加入要件を満たしている場合は扶養から外れます。
次に扶養の要件を満たさない場合も当然扶養から外れる事となりますが、扶養の要件は次の3つを満たすことです。
- 原則として日本に住んでいる方
- 被扶養者の直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹(同居は不要)
もしくは同居している3親等以内の親族、事実婚の父母子(同居は必要) - 年収130万円未満(ダブルワークの収入を合算し、交通費など含む1月〜12月の年間収入)
ただし被扶養者の年収の1/2未満(別居の場合は仕送り額以下)
この3の部分がいわゆる扶養の130万円の壁という事になります。
年収が130万円を超えた場合、扶養から外れてしまいますが、ダブルワークのどちらも社会保険の加入条件を満たしていない場合は、ご自身で国民年金・国民健康保険へ加入することになります。
社会保険加入時の厚生年金、健康保険とは異なり会社が半分負担するということがなくなり、保険料の負担も大きくなりますし、給付の内容も社会保険よりも変更になりますので注意が必要です。
社会保険加入(健康保険・厚生年金)と国民健康保険・国民年金の保険料の比較
社会保険加入時の健康保険、厚生年金の保険料と、社会保険未加入で扶養から外れてしまった場合の国民健康保険・国民年金の保険料を比較します。
パターン | 保険料(令和4年) |
社会保険未加入&扶養から外れる A社 月80,000円(年間96万円) B社 月80,000円(年間96万円) | 国民健康保険 30,370円 国民年金 16,590円 合計 46,960円 |
社会保険加入(扶養から外れる) A社 月90,000円(年間108万円) B社 月90,000円(年間108万円) | 健康保険 4,316円 厚生年金保険 8,052円 合計 12,368円 |
健康保険は都道府県や加入している組合によって異なりますが、東京都で全国健康保険協会の場合で記載しています。
ダブルワーク時の社会保険の加入と扶養の関係のまとめ
合算 有無 | 原則 | 501人以上のみ追加 | 結論 | |
社会保険の加入条件 | それぞれの会社で要件を確認 | 正社員の労働時間・労働日数の3/4以上働いている人 | 週の労働時間20時間以上 月収88,000円以上 1年以上雇用見込みあり 学生ではない 上記4つ全てに該当している場合 | 社会保険の加入条件を満たしている会社で社会保険へ加入し、扶養から外れる |
扶養の要件 (年収のみ) | ダブルワークを合算して計算 | 年収130万円未満 (ダブルワークの収入を合算し、交通費など含む1月〜12月の年間収入) | ー | 社会保険の加入条件を満たしてなく扶養の要件を満たしていれば扶養から外れない |
国民年金・国民健康保険 | ー | ー | ー | 社会保険の加入もなし 扶養からも外れる場合 国民年金・国民健康保険にご自身で加入 |
ダブルワークの場合は論点が複数になり、社会保険への加入や扶養から外れてしまうのかが非常に分かりづらくなってしまいますので、整理して理解をするようにしてください。
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